子どもがかかりやすい
三大夏風邪に注意!
症状と予防法を知ろう2018.8.15江崎奈緒子先生

夏休み真っ只中! 海に、山に、イベントに。まだまだやることが盛りだくさんというご家族も多いのでは。けれどせっかくの旅行やイベントを前に風邪をひいてしまった…なんて経験はありませんか?夏休みを満喫するためにも、体調は万全にしておきたいですよね。そこで、子どもたちを中心に毎年流行する三大夏風邪(手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱)について、原因や症状から、家でできる予防法まで詳しくご紹介します。

三大夏風邪「手足口病」
「ヘルパンギーナ」
「プール熱」の原因と特徴

「夏風邪」とは、文字どおり夏にひく風邪のこと。主な原因はウイルス感染によるものですが、冬の風邪の主な原因が乾燥や寒さに強いウイルスなのに対し、夏風邪は高温多湿の環境を好み、夏に活発化するウイルスによって発症します。これらのウイルスが引き起こす感染症には、症状によってさまざまな病名がつけられています。それが、三大夏風邪ともいわれる「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱」です。

今年もまた「手足口病」に…

「手足口病」は、口の中や手足に水ぶくれのような発疹が出るのが特徴で、4歳くらいまでの乳幼児を中心に流行します。手足や口だけでなく、お尻や膝の周り、顔に発疹があらわれる子も。また年によって流行する型が変わったり、複数の型が同時期に流行したりする場合もあるため、ひと夏に2回発症する子もいます。

5歳以下の小さな子が
かかりやすい「ヘルパンギーナ」

「ヘルパンギーナ」は5歳以下の子どもが感染することがもっとも多いといわれています。突然の高熱に続いて喉や口の中に水ぶくれのような発疹ができ、数日経つと水疱がつぶれて潰瘍になり、痛みを伴います。高熱に加え、食べられない、飲めない、不機嫌になるといったことから、発症に気づくことが多い感染症です。

登園、登校が停止となる
「プール熱(咽頭結膜熱)」

「プール熱」は、かつてプールの水を介して感染が流行したことからこう呼ばれていましたが、最近の施設はしっかりと水質が管理されているため、プール水を介した感染はほとんどみられません。プール以外の場所でも感染し、正式名称は「咽頭結膜熱」といいます。

症状は高熱と咽頭炎、結膜炎が特徴で、活動的になる幼児期から学童期の子どもに多く発症します。「咽頭結膜熱」は、学校保健安全法で指定された学校感染症第2種に属し、保育園や幼稚園、学校への登園・登校は停止となるので、気をつけてください。

夏風邪の感染経路を知ろう

夏風邪の感染経路は「飛沫感染」「接触感染」「経口感染」の大きく3つに分けられます。

  • 1. 飛沫感染
    咳やくしゃみから
  • 2. 接触感染
    水疱の内容物の接触やタオルの共有など
  • 3. 経口感染
    おむつ交換で便に触れる、唾液のついたおもちゃを触って舐める

夏風邪のウイルスは、症状が消失した後も長ければ1カ月程度、便から排出されるといわれています。保育園や幼稚園、学校で流行しているときや、家族が感染した後はとくに注意しましょう。

ウイルスは粘膜からも感染する?!
ウイルスは口や鼻からだけでなく、目の粘膜からも感染することがあります。プールに入った後はシャワーで体を洗うことと同様、しっかりと目を洗うことも忘れないようにしましょう。

今日からできる
夏風邪予防法!

夏風邪を予防するためには、免疫力を低下させないことが重要です。適度な水分補給と十分な睡眠をとり規則正しい生活を送ることはもちろんですが、日常生活の中でもちょっと意識するだけで予防に繋がるポイントがあります。できるところから、ぜひ実践してみてくださいね。

1.こまめな手洗い・うがいを

手洗い、うがいをしっかり行うことは感染症予防の基本です。外出後、食事の前、トイレの後、オムツ替えの後、鼻水をかんだ後などには、必ず手を洗うようにしましょう。

2.室内温度は26〜28°Cを目安に

クーラーのきいた室内と屋外の温度差が大きいこの時期は体力を消耗しやすく、うまく体温調整ができなくなって体調を崩すお子さんが増えてきます。ポイントは、室温と外気温の差をなるべく小さくすること。そのためには、暑いからといってエアコンの室内の設定温度を下げすぎないように調整しましょう。

3.おもちゃや食器などの
共有に注意

乳幼児は、おもちゃの共有/貸し借りによる接触感染や経口感染の可能性もあるため、周囲で感染症が流行しているときは注意しましょう。また、家族への感染を防ぐためには、タオルやコップなどの食器は共有しないようにすると良いでしょう。

発疹、発熱、喉の痛み。
夏風邪に
かかってしまったら

発熱や発疹などの症状があらわれたら、小児科を受診しましょう。通園、通学をしている子であれば、早めに受診して診断を受けることで、園や学校にも注意喚起をすることができ、感染の拡がりを抑えることにつながります。

乳幼児は普段と
違う様子があったら受診を

体の不調を言葉で伝えられない乳幼児の場合、不機嫌になる、いつもよりよだれが多い、食べない、飲まないなど、普段とは違った様子がみられるときは受診をおすすめします。とくに口腔内に水疱ができる「手足口病」や「ヘルパンギーナ」は、痛みで唾液を飲み込むことさえ辛くなり、よだれが増えたり、普段飲んでいる飲み物が飲めなくなったりすることがあります。

夏風邪にかかった時の注意点は?

熱があっても本人に活気があれば、さっと体を流すくらいのシャワー浴はOKです。おむつをしている子はとくにおむつの中が蒸れるので、シャワーで流してあげるとさっぱりします。ただし、長時間の入浴は避けて。体力を消耗しないように早めに切り上げてください。

深刻な合併症を引き起こす
可能性もあるので注意

熱や痛みに対して解熱鎮痛剤が処方されることがありますが、三大夏風邪はいずれもウイルスが原因のため、抗生剤は効きません。基本的には数日の自然経過で熱が下がり、症状は落ち着いてきます。ただし、まれに深刻な合併症を引き起こすことがあります。

「手足口病」や「ヘルパンギーナ」の原因であるエンテロウイルスは、髄膜炎や脳炎などの中枢神経系の合併症を起こすことがあり、アデノウイルスは咽頭結膜熱の他にも、気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患、胃腸炎、出血性膀胱炎、はやり目などさまざまな症状の原因となります。また、ほかの感染症との混合感染の可能性もあります。

発熱が長く続くとき、ぐったり感が強いとき、頭痛や嘔吐がみられるときなどは、1度病院を受診していたとしても、再度病院を受診し診察を受けましょう。

正しい手洗い・うがいで
夏風邪対策

暑さによる睡眠不足や食欲低下、クーラーによる室内外の温度差などで、ただでさえ体調を崩しやすいこの季節。まずは手洗い・うがいを基本に、規則正しい生活習慣に気をつけて、体にとって快適な環境を整えましょう。

それでも夏風邪にかかってしまったときは、早めに受診して医師の診察を受け、脱水に注意しながらケアしましょう。
暑〜い!けれど、楽しい夏。家族みんなで元気に乗り切って、心に残る思い出をたくさんつくってください!

教えてくれたのは...

江崎奈緒子先生
社会福祉法人 聖母会 聖母病院 小児科医長。小児科一般、小児保健、アレルギー外来担当。1997年 名古屋大学卒業。名古屋第一赤十字病院にて研修。2008年4月より現職。日本小児科学会、日本小児アレルギー学会 会員。

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